安定と信頼の「別冊太陽」。写真はきれいだし、文章はちょうどいいところを
押さえてくれるし、とてもいい雑誌だと思います。ラインナップも素敵。
置く場所と金があれば全巻揃えたいくらい。何十年も続くいい仕事。
……あ、今別冊太陽のバックナンバーを見てみたところ、全巻は大口叩きすぎました。
興味のあるものだけ買いたいと思います。意外に好みドンピシャというのは少なかった。
最近はネタ不足というのもあるのかな。
今回の「みすゞ本」は平均的な文章量よりもだいぶ少なくて読みやすかった。
それは、かなりページを本人の作品に割いていたから。
金子みすゞの作風はひらがなを多用した平易なものだから読むのは
さくさく読めるのよね。
だがしかし。
詩って読むのが難しいと思っていて。それは金子みすゞの詩でも例外ではない。
純粋に言葉を味わうというのは、ちゃんと心構えが出来てないと難しい。
美味しい料理は食べさえすればその美味しさがわかるけど、
詩歌を味わうには……やっぱり能力というか、文学的体力が必要だと思っている。
わたしは昔、一応1冊金子みすゞを買ったけれども、……読んで「良いな」とは思っても、
特にはハマらなかったのよね。まあ人間そんなもんじゃないですか。
俳優にしても、嫌いではないし楽しく見ているけど、大好きにはならない人がいる。
金子みすゞは特に大好きな詩人ではない。
が、今回写真と詩を組み合わせた紙面を見て、「これはちょうどいい」と思ったね。
写真に詩をつけるのは、正直写真としても詩としても一本立ち出来ない作品を
2つで1つ的に売っているという偏見がある。そういう場合もあると思う。
でもこの写真と詩の組合せは、合わさることでいい感じに情報密度が高まって、
見てて気持ち良かったなあ。風景写真であることもわたしの好みだった。
人間とか、人工物とか、そういうジャンルの写真は苦手なのよね。
シンプルな画面構成とシンプルな詩の言葉が気持ち良かった。
あと、仙崎と下関のゆかりの地地図が良かった。
そもそもわたしがなぜこれを読んでいるかというと、近々山口県に行くからなのよね。
仙崎にも行く。ただ、主目的は青海島観光船つもりだったんだけど、
この本を読んだことで、金子みすゞゆかりの地もしっかり歩いて来たいと思った。
やはり知識は旅を豊かにする。知って歩く土地と知らずに見る土地は違う。
……だがそうなると仙崎にもそれなりの時間がかかって困る……。
青海島観光船に金子みすゞ博物館をちょっと見て終わりでいいと思ってたんだが、
出来れば波の橋立あたりにも行きたくなって。
そうなると1日必要じゃないですか。1日時間が取れるだろうか。ちょっと無理っぽい。
この本には金子みすゞの娘さんのインタビューも載ってるのよね。
2023年にこの本が出た当時はもうお亡くなりになっていたと思う。
大正15年生まれのひとだったというから。
そのインタビューの中で、「母には愛されていなかった」と感じていたと語っている。
母の記憶はない。しかし自分を置いて死んだ母は自分を愛してはいなかったのだろうと。
そう思いながら生きる娘も辛かっただろう。そう思われる母も辛かっただろう。
特に、離婚した夫に娘を取られないための手段として自死を選んだというのならなおさら。
娘の目から見れば、父は悪い人ではなかったという。
でもみすずは、最愛の娘を元夫に託すくらいなら、死をもって妨げたいと思い詰めた。
……人間にはどうしても「違う生き物」としか思えない人もいるものね。
特に真面目な人と自堕落な人、繊細な人と大雑把な人との組み合わせはお互いに
恨むことになりがちな気がする。同じ人間と思えず、理解も出来ない。
いや、本当はこんなことをだらだら書くよりも、金子みすゞを「発見した」
矢崎節夫について書くべきだった。
金子みすゞは、今でこそ知ってる人も多くいるけど、ある時急に名が知られるように
なった詩人なんですよね。本屋の平台を席巻していく様子に、なんだなんだと思っていた。
伊藤若冲のフィーバーぶりに似ている。
そしたら、みすずはこの本の監修の矢崎節夫が「発見」したらしいですねえ。
資料がなくてなかなか苦労したそうだ。古書店を回って回って……
いろいろなところを探し回って。調べて。仙崎や下関で関係者を探したけど見つからず、
何年もかけてようやく下関在住のみすゞの知人という人物を尋ね当て、電話をして
「明日行きます!」と言ったところ、「わざわざ来なくても東京にみすゞの実弟がいる」と
教えられて。それが劇団若草の創始者の上山雅輔。
このエピソード好き。
矢崎の仕事により1984年金子みすゞ全集発行。
矢崎節夫著「童謡詩人金子みすゞの生涯」1993年発行。
映画「みすゞ」2001年。
ドラマ「あかるいほうへ あかるいほうへ」2001年。
今ではかなり人口に膾炙した詩人ですよね。「聞いたことある」度でいえば、
詩人としては日本で五指には入るだろう。教科書にも載ってるんでしょう?
矢崎の熱意が金子みすゞを生き返らせた。
金子みすゞについての関連本、もう一冊くらい読もうと思っていて、
またムック本でお茶を濁そうと思っていたんだけど、こうなると矢崎節夫の本を
読まざるを得ないよ。次は「童謡詩人金子みすゞの生涯」を読みます。
森鴎外も高杉晋作も読もうとしているんだが、間に合うのかな?

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